一点もの フランスの金細工職人による手作り アメシストとダイヤモンド ホワイトゴールドのクロワ・ド・クゥ フランス式シルエットと透かし細工の優美な作例 36.5 x 23.0 mm


全体の重量 3.3 g

突出部分を含む十字架のサイズ 縦 36.5 x 横 23.0 mm  ※上部に通した外付けの環を除く。


フランス  二十世紀中頃



 フランスの伝統的意匠に基づき、十八カラット・ホワイト・ゴールドと宝石で制作したクロワ・ド・クゥ。クロワ・ド・クゥ(仏 une croix de cou)はフランス語で「首の十字架」つまり首に掛ける十字架という意味で、信心具ではなく装身具としての性格が強い十字架型ペンダントをこのように読んでいます。本品は金細工職人が手作りしたペンダントで、金の透かし細工と宝石のきらめきが軽やかな印象を与えます。





 本品十字架は縦木、横木とも末端に向けて開大し、各末端は外に向かって半円状に張り出します。これはフランスの古いクロワ・ド・クゥに特有の形状で、現代の作品に多い直線的意匠に比べると格段に優美な雰囲気を醸します。本品十字架は軽やかな透かし細工で、各末端に宝石の枠を嵌め込み、ペア・カット(しずく形カット)のアメシストを爪留めしています。十字架の中央交差部に四個の C形部品を鑞付け(ろうづけ 溶接)し、強度を増しています。交差部はさらに別の枠を重ね、オーヴァル・カット(楕円形カット)のアメシストと四個のダイヤモンドをセットしています。


 アメシストの語源はギリシア語の形容詞アメテュストス(希 ἀμέθυστος)です。アメテュストスは「酔わない」という意味ですが、これは酒に酔わないということのみならず、誤った思い込みに直結しがちな精神的陶酔に陥らないという意味でもあります。またアメシストは紫色の宝石の代表ですが、紫は青と赤の中間に位置するゆえに、中庸、極端に走らない節度、節制、慎み、心の平静を表します。

 ダイヤモンドはモース硬度 10で、地球上で最も硬い物質です。モース硬度 1から 9まではほぼ一定の割合で硬さが増しますが、9(コランダム)と 10(ダイヤモンド)の間のみ硬さの隔たりが大きく、ダイヤモンドの硬さ(ヌープ硬度)はコランダムの四倍にも達します。ダイヤモンドは卓越した硬さ、非破壊性のゆえに永続性の象徴とされ、世界軸の表象にも関連付けられました。





 本品の金属部分に検質印(ホールマーク)はありませんが、当店で検査したところ、材質は十八カラット・ホワイト・ゴールド(十八金)でした。めっきではなく、金そのもので作った金無垢製品です。

 貴金属の検質印は、製品を商業ルートで販売する際に必要です。その場合、金細工工房は検質所に手数料を払って製品に刻印してもらいます。しかるに金製品が不特定多数の買い手に向けた商品ではない場合、わざわざ費用と手間をかけて検質の刻印を得る必要はありません。信頼関係がある顧客からの特別注文である場合や、金細工師が自身にとって大切な女性のために制作した一点ものである場合いは、検質印は不要です。

 それゆえ金無垢製品でありながら検質印を持たない本品は、販売用商品として作られたのではないことがわかります。推測するに、本品はおそらく若き金細工師が、妻か恋人のために、一点のみを自ら手作りしたものでしょう。初めて本品を見たとき、筆者(広川)は小さな十字架が放つ清冽な輝きに心を奪われました。本品が放つ光は、グラン・メゾン(有名ブランド)の宝飾品には無い《愛の輝き》です。





 十九世紀前半のフランスでは、ビジュ・レジオノ(仏 bijoux régionaux 複数形)と総称される地域固有のジュエリーが富裕な地方で発達しました。十九世紀後半から二十世紀前半には、ビジュ・レジオノに見られるような地域固有の意匠が消滅する一方で、ビジュ・レジオノの流れを汲みつつ地方色を薄めた金製ジュエリーが、フランス全域で使用されるようになりました。

 本品は特定の地方の意匠ではないので、ビジュ・レジオナル(仏 bijou régional 単数形)とは呼びにくいですが、いくつかの点でフランス製アンティークジュエリーに特有の意匠となっており、フランスの本土全域を広義のレジオン(région)とすれば、より広い意味での「ビジュ・レジオナル」ということができます。既に述べたように、縦木と横木が外側に向けて曲線的に開大するのはフランスのクロワ・ド・クゥによくみられる意匠です。末端が半円形に突出する意匠も、フランス製クロワ・ド・クゥの特徴です。


 本品は数十年前に制作された品物ですが、保存状態は極めて良好です。十八金は軟らかいので多少の歪みが生じていますが、石が落ちる等の問題はありません。少ない金で視覚的ボリュームを出すために、多くの金製十字架は中空に作られています。中空の十字架は長い年月のうちに膨らみが潰れたり、薄い部分が破断したりしている作例が多いですが、本品は金の部分が中空ではなく、中身が詰まっているので、潰れることはありません。本品は金無垢製品であるゆえに、永遠に美しい状態のまま末長くご愛用いただけます。商品の実物は写真で見るよりもずっと綺麗で、必ずご満足いただけます。





本体価格 48,000円  販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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